十分な栄養素の摂取によるインフルエンザ予防効果について

中部大学応用生物学部食品栄養科学科 准教授 津田 孝範

風邪やインフルエンザを予防するには、十分な栄養を摂るとともに、免疫システムが正常に働くようしておくことが必要です。ウイルスなどの感染の予防に関連する栄養素には様々な種類があります。

(ア) のどや鼻の粘膜の働きを高める

細菌やウイルスの侵入口であるのどや鼻の粘膜の機能低下を防ぎ、バリアとして正常に働くようにすることで、侵入を防ぐことが考えられます。

→ 関連する栄養素 : ビタミンA、ビタミンB2 など

(イ) 免疫機能を高める

免疫機能を担う白血球の活性維持や増強はウイルス感染の予防に重要であり、これらに関与する栄養素の他、上皮や粘膜を構成するコラーゲンの生合成にも関係する栄養素があります。

→ 関連する栄養素 : ビタミンC、ビタミンB6、亜鉛 など

(ウ) 活性酸素による障害を防ぐ

白血球の1つである好中球や単球はウイルスを喰食し、細胞内で活性酸素により殺菌除去します。しかし過剰に活性酸素を放出してしまうと、細胞や組織自身を傷つけてしまうため、肺炎などの重篤な症状をきたす原因にもなると言われています。過剰な活性酸素による害を防ぐ抗酸化物質を摂取することが重要です。

→ 効果的な栄養素 : アントシアニン、ビタミンC、ビタミンE、セレン、CoQ10 など

このように、インフルエンザの予防対策の一つとして、十分な栄養素の摂取が重要です。カシスは、種々の栄養素を豊富に含有していることから、栄養素の給源の一つとして活用できます。

以下、カシスに豊富に含有される様々な栄養素の中から、インフルエンザの予防にも関連すると考えられる栄養素をご紹介します。

ビタミンA

ビタミンAは、粘膜の形成や皮膚などの上皮組織の分化に必要な栄養素で、ウイルスや病原菌などが侵入するのを防ぐためのバリヤ機能を保つ作用をしています。ビタミンAの摂取が十分でないと腸管での免疫機能も低下すると報告されています。

ビタミンB2

ビタミンB2は、粘膜の正常化と関連していることが知られており、体の中では酸化還元酵素の補酵素として働きます。ビタミンB2は、酸化酵素のひとつであり、外部からの侵入物から体を守るために必要な活性酸素を生成するキサンチンオキシダーゼの補酵素として働いています。

ビタミンB6

ビタミンB6は、たんぱく質やアミノ酸の代謝に関わる酵素の補酵素として働いています。ビタミンB6の欠乏は免疫能の低下に関係しています。

ビタミンC

ビタミンCは数多くの役割を持ったビタミンですが、生体の皮、結合組織、骨、軟骨などに多く存在するタンパク質であるコラーゲンの生合成に必須です。また生体防御に重要な役割を果たす白血球は、ビタミンCを多く含み、白血球の正常な活性維持に重要とされています。

ビタミンE

ビタミンEは生体内の過酸化反応を抑制する抗酸化作用があります。その他、血行の改善にも働くことが知られています。

ビタミンE自身にウイルス増殖を抑制する作用は見出されていませんが、過剰な活性酸素による免疫システムの障害を抗酸化作用により抑制する作用が想定されます。

亜鉛

亜鉛は、種々の生体内の代謝や細胞の増殖に関係する酵素の構成成分です。亜鉛の欠乏により、白血球の構成比が変動し、亜鉛が欠乏している人では、免疫の働きが弱いことが報告されています。

グラフ・データ出典:USDA Food Composition Data

日本カシス協会事務局